空にいちばん近い列車

JR線最高地点を走る小海線は、沿線に清里・野辺山・八ヶ岳そして小諸と著名観光地を持ち、以前ほどではないにせよ夏期には特に賑わう「高原列車」だ。「空にいちばん近い小海線」の名は伊達ではなく、JR駅標高十傑の実に9位まで独占する。
同線へ2007年に投入されたキハE200形は、世界初の営業運転となる「ハイブリッド鉄道車両」。実用化を見極める長期試験として、ふだんは中込~小諸間、ハイシーズンには小淵沢~野辺山間を中心に運用されている。

本形式は「ディーゼル発電機とバッテリを積んだ電車」というべきもので、「キ」―気動車として扱われるのは動力源がディーゼルエンジンであることによる(バッテリの外部充電はしない)。最終的にモーターで走るJR貨物のDF200がディーゼル機関車なのも同じ理屈で、さらに本形式のもとになった試作車キヤE991形が燃料電池式への改造でクモヤE995形「電車」に変身したのも、動力源による違いを如実に表す例といえる。
一方JR北海道がキハ160形を改造して、現在札幌近郊で試験走行中の「モータ・アシスト式ハイブリッド気動車」ITT (Innovative Technology Train)。エンジン駆動軸は台車につながっており、電子制御化された機械式変速機を通してモーターと出力調整するシステムで、既存車の改造で安価にハイブリッド化が可能とされる。このアプローチの違いは、自社でも量産するほど多数の電車を新造するJR東日本と、気動車が大半を占めるJR北海道との違いといって良いだろう。

画像

キハE200-2

  • 小海線 佐久平→中佐都 2008-4
  • D200, AF Nikkor 50mm F1.4D
  • ISO100, 1/250, f6.3

長野新幹線の佐久平駅近くで朝の時間に撮れるかと思ったのだが、現地に行くと地図に載っていない高速道路の建設工事がはじまっているではないか。ある程度の距離を取るにはどうしたものかと思案の末、けっきょく畦と工事現場の境界線上で、順光も限界に近いくらいの時間でねじ込んだ感じのカットになった。下の枯れ草もうるさいし、もうすこしすっきりした場所で撮り直す必要がある。右上に妙な丸い物体が写っているが、これは熱気球だ。
このあと実際に小諸から小淵沢まで試乗してみた。モーターで発車し加速していく途中でエンジンが始動するという、たしかに独特の走行だった。停車時はアイドリングストップ状態で静かだけれど、ときどきブザーが鳴ってエンジンが起動し、バッテリを充電する。

戦後の一時期、国鉄ではエンジン発電によりモーターを駆動する「電気式気動車」を試作したが、低出力のエンジンとモーターでは重く非力なだけの車両となってしまい、現在主流である液体式の技術発達により自然消滅した。国鉄時代における電気式の実用化はDD50,DF50などの機関車数例にとどまっている。
キハE200は電気式気動車、ITTは機械式気動車の再来とも取れる車両だが、いずれも小型で高性能なエンジンやモーター・バッテリの登場と、これらを高度に協調させる電子制御の進化によって実用の域に達したものだといえる。


■ウィキペディア日本語版: 日本の気動車史

この記事へのコメント

2008年11月06日 01:01
こんばんは~

キハE200というと、私の場合どうもハイブリッドというより電機式気動車という感じが…(苦笑)。
これってたぶんプリウスの存在があるからなのでしょうね。
当たり前ですが、時代とともに技術の進歩もめざましく、今では内燃機関と電気機器が床下に収まってしまうのですからスゴイものです。
また、キハ160のアシストモーターは比較的見えやすいところに付いているのですが、意外と小さくてビックリしたものでした。

ところで宮本さんも空飛ぶ謎の球体を…
じゃなくて気球なんですね(笑)。
2008年11月06日 06:43
おはようございます。

小海線は乗ったことはありませんが、ずっと昔に清里駅や野辺山駅の駅舎を写真に撮ったことがありますし、息子たちが小海線の車窓ビデオを買って見ていたこともあって、馴染みがある路線です。

今はこんなハイブリット車両が走っているんですね。
消えてゆく車両もあれば、こうして新しく造られる車両もあるというのは、なんだか感慨深いです。
2008年11月06日 23:07
加藤さん こんばんは。
最近いろんなものが画面に入ってきているような気がします(笑) これは春先の写真ですが…。

キハE200はシステム的に電車といってもいい車両ですね。ITT(キハ160)の方は駆動軸がつながっていて、間違いなく気動車と言えますけれど。たしかにハイブリッド車を語るとき、プリウスの影響は大きいかなと思います。エネルギー源という見地でいけば、どれも「複合動力」なんですけどね。
プリウスには2回ほどレンタで乗り、小海線よろしく山坂道で回生しまくりました(笑) あとエネルギーモニタも見飽きません(ヨソ見するな!)

ITTのモーターは台車の外についているんですね。そんな小さなモーターで普通の電車並みに加速していくとは、たいしたモノです。
2008年11月06日 23:08
静さん こんばんは。

昔懐かしい車両が一つまた一つと消えていくのは寂しくもあります(ことに今年はずいぶんあるような…)が、新しい技術で登場した車両には鉄道ならではの魅力をより一層発信してほしいと思うところです。

小海線には乗車されたことはないそうですが、清里や野辺山の駅舎はご覧になったことがあるのですね。このあたりもひところにくらべずいぶん様変わりしてしまったようです。次回お越しになる場合は、ぜひハイブリッド車を体験してみてください。
2008年11月09日 23:25
こんばんは。

こちらがJR東日本のハイブリット車両なんですね。「こうみ」という可愛い愛称がつけられているそうで・・。
JR北海道のように改造車両ではなく、最初から専用車両として開発されたものなのでしょうか?
先日、私のブログへコメントくださった方が、この車両のCMを紹介してくださったので走行している様子も見ることができました。
JRとしては一番標高の高い路線を走る列車は、「環境に優しい高原列車」とのコンセプトは、広く一般の方に関心を持ってもらえますよね。
JR北海道はこの先、どのような展開になるのか気になるところです。
記事中に私の拙い記事へのリンクを貼っていただき、大変光栄です。ありがとうございました。
2008年11月10日 00:31
水無月さん こんばんは。

このキハE200形「こうみ」はパンタグラフがないけれど実質的に電車の仲間といっていい車両ですね。試作車キヤE991の試験で実用化できると判断されて新規に3両を製造し、小海線に配備されています。JR一の標高を走る小海線は観光路線でもありますし、環境対策をアピールする場所としては好適なんでしょうね。
今年は普通の気動車キハE120が登場しています。長期試験の結果どちらを選ぶかは興味深いところ。

いっぽう北海道の場合、既存車の改造が可能なのをメリットとしていますが、そのコストに見合うかどうかが実用化のカギでしょう。…ちなみに私の場合、それ以前に当のキハ160をまだ目にしていないので、というところから(笑)

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